心の病は食事で治す ★★★★★
2005年出版
「脳は臓器です」という言葉を見たときは、「脳は神秘的で未知の領域(神の領域)」というイメージを持っていた自分にとっては稲妻が走ったような衝撃だった。
脳も他の臓器と同じく必要な栄養を与えないと機能しない。
内容は実際の生化学実験の結果を提示して語られており、とても信用できる。
また著者の主張は明瞭で一貫しており、化学的な要素を含んでいるのにもかかわらず分かりやすい。
なので★5つ
p.4 はじめに
心は、私たちが持っている脳という臓器のはたらきによって発生したものであり、心の病は脳の働きの不調によって起こることが明らかになっているからだ。
心に焦点を当てるのでなく根本である脳という臓器に注力するのか
p.4 はじめに
薬を出来るだけ使わずに、正しい食生活、ビタミン、ミネラル、必須脂肪酸を上手く活用することで治す「分子整合精神医学」という方法を紹介する
この手の本では、これこれはこれに良いから食べなさいと羅列されるパターンが多い。
事実上無理だよと思ったり、多すぎると思ったりで大して役に立たないで終わってしまう本が多い。
p.37 人工物質の開発に突き進む製薬会社
上述したカナダとアメリカでの研究結果から、こんなことがわかる。すなわち、「感情の不安定さ」という心の病は、栄養失調による脳内物質の不足によって引き起こされた。脳内物質が十分に提供されてることによってはじめて、脳が正常に働き、感情、行動、考え、判断といった心が安定する。このとき私たちはは正常なのである。
実際の実験結果を読んだ限りではその通りだと思う。
追記(2012/08/13)
「感情の不安定さ」は実験の通り栄養失調が要因だと思う。
心の病気の要因は他にもあり、例えば、閉所に閉じこめられたり、言葉の暴行を受ける、過酷な労働、人間関係などもあると思う。
現代の心の病気は後者のストレスが原因が多いと思われ、栄養失調という要因は弱いと思う。
なのでこの実験は現代ではそれほど役に立たないと思われる。
いやもしかしたら、ストレスによって脳内物質が十分に供給されていない状況になっているのかもしれない。これは自分の推測だから何の根拠もない。
だからといって以降の著者の主張が意味を成さないとは思わない。変わらず脳は臓器であり栄養を必要としている。心の病にすくなからずともプラスにはなると思うからだ。
p.38 人工物質の開発に突き進む製薬会社
パテント化出来る道を追求することで世界でもっとも利益率の高い、儲かるビジネスを運営している。製薬会社が天然の物質を医薬として利用する道を追求しない主な理由は、天然の物質はパテント化できないからなのである。
なるほど
p.52 セロトニンを作らないが、効率よく使うSSRI
SSRIはどんな働きをするのか。まず、神経細胞を刺激して、その末端からセロトニンを放出するスピードをあげる。しかも放出されたセロトニンが、「再取り込み」によって神経細胞に連れ戻されるのを防ぐ。このため、脳内のセロトニンがいっそう効率よく使われる。
セロトニンを十分に供給することによって鬱病を防ぐという自然が行っていることを、SSRIという薬によって人工的に創出したのである。
しかし、である。天然のアミノ酸であるトリプトファンをとれば、脳はこれを酵素の働きでセロトニンに変換する。これが自然の設計である。残念なことに、多くの鬱病は、セロトニンを放出する仕組みは上手く機能しているが、そもそも脳内にセロトニンが十分に存在しないことによって発生する。しかもSSRIはセロトニンを作ることも、他の物質を助けることによってセロトニンを増やすこともできない。
ということはセロトニンを増やさなければいけない。増やす薬を作ればいいのではないのか?
p.53 セロトニンは作らないが、効率よく使うSSRI
SSRIの服用によって、イライラ、暴力、自殺など多く名不幸な出来事が発生してきた。これらはSSRIの副作用と疑われている。
のちに著述されているコロンバイン銃乱射事件などなど。
p.54 セロトニンは作らないが、効率よく使うSSRI
SSRIによってこんな皮肉なことが脳内で起こる。SSRIによって発生したセロトニン過剰を克服するため、セロトニン受容体が劇的に減少していたのである。この損失は一時的か恒久的なものかは、だれもわからない。
これは怖い。
p.56 感情を安定させる基礎フォーミュラ
サプリメントは、服用を開始してから最大の効果が現れるまで平均して1〜3ヶ月かかる。自然が何かをするには定められた時間を要する。
早急に効果があったらそれはそれで怖い。
p.57 感情を安定させる基礎フォーミュラ
マルチビタミンとしてとってほしいのは、ビタミンB群、C、イノシトール、コリンだ。ナイアシン
不安障害の症状は、軽度のナイアシン欠乏症と非常によく似ているB6(ピリドキシン)
すべてのアミノ酸の代謝にかかわり、アミノ酸から伝達物質を作るのにも欠かせない。とたえば、セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ヒスタミンといった生理活性アミンと呼ばれる伝達物質は、アミノ酸から二酸化炭素を取り除く脱炭酸反応によってできるが、B6がこの反応を手助けする。また、安定した免疫力を保つのにもB6が必要である。
もしB6が十分に供給されなければ、生理活性アミンが脳内に不足するため、心配、イライラ、不安がつのり、神経質になる。
イノシトール
セロトニンとアセチルコリンの適切な働きに欠かせない。不足すると鬱病を引き起こす。それからイノシトールは、強迫性障害やパニック障害を留める効果があることが知られている。鉄
鉄の役割は、酸素を細胞に運ぶことによって栄養素を酵素で効率よく燃焼し、大量のエネルギーを生産し、ATPという形で蓄積することだ。だからもし鉄が不足すると、記憶力や集中力の低下、鬱病が発生する。マグネシウム
マグネシウムは生体のエネルギー通貨ATP、遺伝子DNAの構成成分であるだけでなく、エネルギー生産にも関わっている。このため、マグネシウムの不足は、脳の疲労、鬱病、不安、不眠、震えを引き起こす。
主に不安に関する成分を引用した。
p.78 あなたは低血糖症なのか
もしあなたが気分、考え、感情が変わりやすいことに当惑することがあるなら、心理的な症候群と簡単に片付けない方がよい。まず、人間は生物学的な存在であり、低血糖症になるとあなたの脳の代謝が様変わりし、感情が定まらず、行動が落ち着くか無くなる。
不安障害ではなく低血糖症という病気の可能性もあるということ。
p.87 単糖類、二糖類、多糖類
食品が血糖値を上げるスピードを数値化したものが、グリセミックインデックス(GI、グリセミック指数)である。
食べてすぐに血糖値を急激にあげる食品は「高GI食品」と呼ばれる。砂糖をたっぷり含んだキャンディ、コーラ、コーヒーは、この代表である。
反対に、食べてから血糖値をゆっくり上げる食品は「低GI食品」と呼ばれる。その代表は、野菜、キノコ、海藻、大豆、肉、魚介類、玄米ご飯などである。
p.91 なぜ低血糖症が発生するのか
たばこに含まれるニコチンや、コーヒーに含まれるカフェインは、副腎にアドレナリの生産を命令し、血糖値を上げる。
ここでもタバコ、カフェインの悪影響が。
p.103 脳内のを伝達物質が駆け巡ることで心が発生する
もし、伝達物質の原料が不足することにでもなれば、神経シグナルが円滑に伝わらない。このため、イライラ、不安、気落ち、深い悲しみなど様々な症状が現れる。それが高じれば、不幸を感じ、人生を充実させる力がひどくそこなわれ、日常生活支障をきたす。これっを私は心の病と呼んでいる。
脳内では多くの伝達物質が活躍しているが、それらはアミノ酸、アミン、ペプチドの三種類に分類できる。ただしアミンとペプチドは、アミノ酸から作られる。したがって、アミノ酸こそが心を作り出す最重要物質ということになる。
脳のインバランスが心の病という一貫した著者の主張。
p.104 心を生化学的に理解する
酒を飲めば心が変わるし、心理的な緊張によって身体の筋肉が固くなってしまうことから分かるように、心と身体は密接に関わり合っている。
すなわち、心の土台は脳の生化学であり、そして脳(=心)と身体は切っても切り離せない密接な関係にある。
心の病を理解するために脳を化学的に研究、勉強していこうという動機になる。
p.106 薬ではなく、アミノ酸で治す
まず、アミノ酸そのものが伝達物質になる。つぎに、アミノ酸は短い工程で伝達物質アミンに変身する。そして、アミノ酸が幾つか繋がれば伝達物質ペプチドができる。
これらの伝達物質は、わたしたちに快感、痛みの緩和、免疫系の強化、老化への抵抗力を与えてくれる。
したがって、アミノ酸は、鬱病、不安障害、記憶障害など多くの心の病の治癒に活用できる。
p.107 薬ではなく、アミノ酸で治す
抗うつ薬は、ほとんどの場合、脳内のセロトニンとノルアドレナリンの効果を高めることで効果を発揮する。しかし、トリプトファンやチロシンを採れば、生体はこれらの伝達物質を自然に作るので、はるかに少ない副作用で抗うつ薬と同じ効果が得られるはずである。
p.112 アミノ酸が心を平安にする 不安障害
心に不安を抱かせる元凶は、わたしたちがストレスを受けたときに、危機が迫っていることの警告として副腎から放出されるアドレナリンである。この警告システムは、脳を興奮させることによって覚醒させ、胃をむかつかせ、冷や汗をかかせ、震えさせ、心臓の脈拍を速める。
もう何度も本で読んだ不安のメカニズム
p.112 アミノ酸が心を平安にする 不安障害
しかしある種のアミノ酸は、脳の興奮を抑制するブレーキを強化することで、脳を覚醒させるβ波を減らし、脳を鎮静させるα波を促進する。α波には、心を静め、リラックスさせる効果があり、しかも胃液の分泌を高めるので、ストレスによる交感神経の緊張によって発生した消化不良の問題が解決する。
p.113 アミノ酸が心を平安にする 不安障害
脳を鎮静させるアミノ酸の代表がグリシン
脳と脊髄(中枢神経系)全体、すなわち、全身を通して神経細胞の興奮を抑制する。タウリン
神経細胞が興奮性伝達物質たるノルアドレナリンを放出するのを抑制し、そのうえ、全身ではあたかも軽度の抗不安薬であるかの如く振る舞う。タウリンは心臓のような興奮性の臓器や、脳と脊髄で大量に見いだされ、全身の神経細胞の興奮を抑制するブレーキとなっている。ヒスチジン
脳を覚醒させるβ波を減らし、脳の興奮を鎮めるα波を増やす働きがある。ギャバ
脳の強力な鎮静剤と思えばよい。
抗不安薬の服用を続けると依存症が発生するが、このとき、脳内ではギャバが枯渇している。だから、抗不安薬の依存症から回復するには、枯渇したギャバを補わねばならない。
まさに脳の生化学
p.140 不安障害を退治する新しい方法
不安は、脳内物質のインバランスによって発生する。あなたのかかりつけの医師が、脳内物質と心の病の関係を理解しないからといって、あなたが精神科医の所に行き、やみくもに抗不安薬を処方して貰わねばならない理由などどこにもない。また、心理カウンセラーとの話し合いだけで、脳内物質のインバランスを是正できるわけでもない。
確かに。一時的には効果があるとは思うが。
恒久的なことを考えると栄養なのかもしれない。
p.141 なぜ抗不安薬を服用しないのか
ベンゾジアゼピン誘導体(バリウム、リブリウム、ザナックス(ソラナックス)、アチバン)を服用すると、耐性がどんどん増していき、同じ用量では効かなくなっていく。そうなると、不安を鎮めるために、用量を増やしていくしかない。
これは例が沢山あるが例えば。
ホイットニーを殺したザナックス | WONDERFUL WORLD
ソラナックスより
ソラナックスは、我が国では1984年に認可。アメリカではザナックスという商品名で発売されていて、 アメリカ国内の抗不安薬処方第1位を誇っています。
自分が処方されているカームダン錠(ソラナックス錠のジェネリック)もザナックスか。
不安になってきたんですけど。
p.145 あなたは不安障害かもしれない
不安障害は、血液中のブドウ糖レベルが低下(低血糖)して起こる症状の一つである。これは生化学的には容易に理解できる。
こういうことだ。ブドウ糖レベルが急激に下がるのは、ブドウ糖をエサにして生きている脳の神経細胞には死活問題である。このまま放置すると、意識を失い、最終的には死んでしまう。
低血糖はヒトにとって緊急事態であるから、副腎からアドレナリンが血液中に放出される。アドレナリンは肝臓に作用して、肝臓に蓄えたグリコーゲンをブドウ糖に分解し、このブドウ糖が血液中に放出され、脳に送られて事なきを得る。
不幸なことに、脳がガソリンを失い正常に機能しないときに、アドレナリンが脳を刺激すると、不安やパニック障害を起こすのである。
そんな感じはしないけどな。普通の状態の時でも発作はあるし。お腹空いてないときでも発作はあるし。
これは不安障害全体には当てはまらないのではないだろうか?
p.160 不安障害を撃退する秘密兵器イノシトール
セロトニンの効果をコントロールするイノシトールは、強迫性障害だけでなく、パニック障害の治療にも利用され、それ自体が不安を鎮める抑制性伝達物質であることが証明された。
イノシトール!優秀だな。
p.161 不安障害を撃退する秘密兵器イノシトール
もしあなたが、”砂糖たっぷりの菓子類”を無性に食べたくなったときには、砂糖を代謝するのに大量のビタミンB群を消費しなくてはならないことを思い出して欲しい。
もしあなたが感情を安定させたいと思うなら、砂糖たっぷりの甘いスナック菓子、コーラ、ドーナッツを口にするのではなく、タンパク質の豊富なクルミ、カシューナッツ、アーモンドなどのナッツ類を採って欲しい。
ナッツはカロリーと油がありすぎな気がするが。
p.162 血液中の乳酸レベルの上昇が原因で発生する不安障害
砂糖や精製されたデンプンを食べれば食べるほど、乳酸レベルが上がることだ。
乳酸はパニック発作を起こす要因だと本に書いてあったな。
p.163 血液中の乳酸レベルの上昇が原因で発生する不安障害
砂糖、カフェイン、アルコールである。これらの物質を多く採ると、乳酸が血液中に蓄積し、疲労と不安が発生する。
砂糖、精製されたデンプン、カフェイン、アルコールはパニック発作の要因と読み替えることも出来る。
p.164 興奮性伝達物質の過剰が原因で発生する不安障害
興奮性伝達物質の過剰によって発生する不安は、天然の栄養素である抑制性アミノ酸を上手く使うことで鎮めることが出来る。トリプトファン
セロトニンは、脳の極度の興奮による感情の爆発を抑えながら心を平安にし、感情を安定させる「感情物質」である。セロトニンの原料となるアミノ酸はただ一つ、トリプトファンだけである。ギャバ
脳の興奮を抑えるブレーキの中でギャバは、もっとも頻繁に活躍する伝達物質である。グリシン
主に脳や脊髄で神経の興奮を鎮め、固さや緊張を緩和する。タウリン
神経系で興奮性シグナルの強度を抑える
p.166 不安障害にとりたいサプリメント
金かかりそう。どんだけ飲むんだ。
ただ実家の薬箱で全く使われていないAsahiのエビオス錠の成分を見たらトリプトファン、グリシン、鉄、亜鉛、チロシン、ビタミンB6、ナイアシン、イノシトールが含まれてるじゃないか。
しかし1日30錠!!においも臭い。しかも1日30錠とってもトリプトファンは51mgしか摂取できない。上の例を見るとトリプトファンは150x3の450mgもとらなくてはいけないのに。
参考
乾燥酵母の主要栄養成分値|製品案内所|エビオス錠|アサヒフードアンドヘルスケア
p.220 おわりに
脳の仕組みを車に例えれば、ブレーキとアクセルを操作することによって車のスピードがコントロールされるように、脳を「興奮させる伝達物質」と「抑制する伝達物質」との微妙なバランスによって、脳の興奮状態が適度に保たれている。そして車のガソリンに相当するのが、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖だ。
良質のガソリンとは、脳にブドウ糖を安定的に供給する未精製デンプンを大量に含んだ、玄米ご飯、ライ麦パン、サツマイモ、豆類、野菜類、海草類などだ。
p.221 おわりに
心の病は、ブドウ糖が安定的に供給されないか、脳内物質のインバランスによって発生する。これを正しい食事と栄養素の供給によって是正すれば、心の病は治せる。
内容は明瞭で分かりやすかった。
出版社 / 著者からの内容紹介
「薬を頼りにするな」――脳内伝達物質のバランスを食物によって回復し、 うつ病や不安障害などを治す、その理論と実践方法を公開!
内容(「BOOK」データベースより)
うつ病や不安障害など、心の病は脳内の神経伝達物質のインバランスによって発生する。薬を服用すれば症状は改善するが、薬には副作用がある。脳に恒久的なダメージを与えてしまいかねない。薬に頼らない治療法はないものか―。本書は、心の病を正しい食生活、ビタミン、ミネラル、必須脂肪酸をうまく摂取することで治す「分子整合精神医学」という方法を紹介する。なぜフライドポテトはダメなのか?なぜ精製白パンよりもライ麦パンのほうがいいのか?健全な精神は健全な食事でつくる。