空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫) ★★★★☆
先生!に出ていたこの本に興味をもった。
少年犯罪者たちは教誨師に出てきた犯罪者のように、被害者意識を持っているというわけでない。
かといって被害者への謝罪と悔恨にあふれているわけでもなかった。
まだそこまで考えがいたっていないのだろうか?
彼らの詩は、自らの行動の反省と”母に会いたい”、”母に感謝したい”という少年たちのいじらしい母の希求だった。
教誨師と同様に母の偉大さを知ったなぁ。
p.82
きょうは わたしの誕生日
それは あなたが母になった誕生日
p.124
泣きやまぬ母を見て
置いてかれるより 置いていく方がつらいのかな
と思ったりした
p.148
彼らは、一度も耕されたことのない荒れ地だった。ほんのちょっと鍬を入れ、水をやるだけで、こんなにも伸びるのだ。たくさんのつぼみをつけ、ときに花を咲かせ、実までならせることもある。
2007年から、全国でも奈良少年刑務所でのみ行われている先進的更生教育「社会性涵養プログラム」。その指導の一環として受講生たちの書いた詩。受講生は二十代前半の男性ですが、生育の過程で情緒や自尊心を養う機会が少なく、感情や表現など、多くの面で未成熟です。他者とのコミュニケーションに不慣れな受刑者たちが書いた詩が、これまで語られることのなかった彼らの心象を語り、彼らが生きてきた家庭や社会の現実を露わにします。作品には適宜解説を付し、背景や意味が読者に伝わるよう工夫しました。
カバー・表紙・扉・本文には、写真展「知られざる名建築 旧奈良監獄・奈良少年刑務所の美」から、未公開を含む写真11点を使用。独居房内部の写真もあり、受刑者たちが暮らしている奈良少年刑務所の環境を実感できます。撮影は上條道夫。
裁判員制度などで市民と司法との関わりがあらためて問われる今、奈良少年刑務所で行われている矯正指導と、受刑者たちの抱える背景や内面について理解を深めていただけるドキュメントとして、タイムリーかつ貴重な一冊です。