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「少年A」この子を生んで……―父と母悔恨の手記 2016年24冊目

「少年A」この子を生んで……―父と母悔恨の手記  ★★★★☆


あの少年Aを生み育てた親とはどういう人達なんだろう?
やっぱり最悪の家庭環境で少年Aは育てられたのだろうか?
そう思ってこの本を手にとった。


少年Aの両親は、普通の道徳観を持った普通の親に見えた。



突然の少年Aの残虐行為を知らされて驚くのもしょうがない。

だって親だといっても子供の本当の気持なんて100%わかるはずがない。
まして少年Aのように家庭の顔と外の顔をうまく使い分けれるならばなおさらだ。


それに、両親の愛情で守られ、暖かい家庭で育った少年Aが精神的におかしいと思い始めてからはちゃんと少年Aを神経科や児童相談所に連れて行っている。

できることはやっていると思った。



しかし、世の中は均一ではなく多数である標準から外れた人はたくさんいる。

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標準から遠い端の方にいる人は、分かりやすく精神病と診断され隔離される。

しかし、標準と端は連続的につながっていてそこにも何%の人が属している。
その中で端にとても近いが普通に生活ができ一見標準の人と見分けがつかない人がいる。
その人達は、何度諭されても「人を傷つけたり殺してはいけない」ことが理解できない。

つまり環境では矯正できない。

そういう人は必ずいると思う。


p.186

小さい頃からAは、友達や自分自身をも含めて客観的に見られる子供だったように思います。客観的というのが大げさならば、妙に冷めているというか、傍観者のような感じなのです。

少年Aの著書絶歌を読んだ時に全く同じことを思った。殺人を犯しながらも俯瞰で見るているような描写が印象的だった。


p.228

ボクには一人の人間を二度殺す能力が備わっている
神戸新聞社への『犯行声明文』より)

「二度殺す能力」ってなんだろうか?


p.243

Aの家庭環境は愛情にあふれたものでなく恵まれなかったこともあり、毎日ようにAは弟を苛めた。そのため、母親である私から厳しく叱られ、虐待され、暗い幼児期を過ごすという「苛めっ子でありながら苛められっ子」の状態で、それがその後の歪んだAを作り上げた。

この精神鑑定結果は絶歌とこの本から感じられる状況と真逆だ。少年Aは両親(特に母親)が好きで、両親は愛情を持って少年Aを育てた。


絶歌を読むと、もしかしたら少年Aはステレオタイプの家庭環境で育ったとうそぶくことで精神鑑定士を騙したんじゃないかと思う。


p.256

Aには「直観像素質」の力があったことも、事件後初めて知りました。

パッと一瞬見た映像が、まるで目の前にあるかのように鮮明に思い出すことができる能力がある人のこと。

それで絶歌にでてくる詳細な描写だったのか。納得。


p.256

あの子は酷い、だいそれた犯行に及んだにもかかわらず、逮捕されるまで正気に見え普通に振舞っていました。
精神鑑定の結果、精神や脳に異常はない。
あの子は一体、何者なのでしょうか?

生まれながらの異常者なんだと思う。
両親にはどうしようもなかったのではないか。


弟の同級生であった顔見知りの少年を欲望のおもむくまま殺害し、首から上を切断。さらにその生首を自分の通う中学の校門に声明文とともに放置した恐るべき殺人鬼――。1997年、日本中を震撼させた神戸児童殺傷事件の憎むべき犯人は、14歳の少年だった。
今や少年犯罪のるつぼと化した日本で、ささやかれる「社会」そして「親」の責任――。現代におけるその状況下で、殺人犯少年Aの父母がつづったこの手記を読めば、読者は単なる傍観者的立場ではいられない。
わずか14歳でこれほどまで凶悪な事件を犯した少年に対し、向けられる社会の矛先と言えば、まず家庭環境だ。しかし、本書を見る限り、少年犯罪につきものの「家庭不和」は手記の中には出てこない。ここでは少年Aの生い立ちや両親の少年Aに対する愛情が「親の目線」で、言い方を変えれば「実に平凡」に書かれている。だが、この「実に平凡」な家庭環境を強調した親の手記こそが、「犯罪は特別な家庭環境でのみ起こり得る」と捕われがちな発想を「犯罪はどこの家庭にでも起こり得る」という「現実」へ読者を導いてしまうのだ。
ただ、本書は手記である故に、物事の捉え方が一方的になることは避けられず、Aに対してのしつけや関わり方、感情に対しては細かく書かれているが、被害者やその遺族に関することについてはあまり深く述べられてはいない。それを回避するために、被害者側の父親の手記『淳』(土師守著)と読み比べると、家庭環境におけるここでの犯罪原因を自分なりに追求しやすい。(今西乃子) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。