東大とハーバード 世界を変える「20代」の育て方 ★★★★☆
ハーバードと東大の比較から提言という流れ。
序盤ハーバードのシステムを説明するのは分かる。だが、それが93ページまで続くとくどくページを飛ばした。
ハーバードと東大で教鞭をとった著者の言葉はとても説得力があり、教育改革は必至だと思った。
p.194
ヘッドハンティングで「落下傘降下」せよ「リーダーとして育った若者を、あなたの組織で受け入れてくれますか?ちゃんと使いこなせる仕組みがありますか?そうじゃない限り、勝手なことは言わないで下さい。リーダーシップをとれる優秀な若者はいるのです。問題は、彼らを使いこなす力量がある大人がいない、システムが日本にないことです。」
教育改革には触れられているが、受け入れる側の社会システム改革には触れられていない。これでは著者の言うリーダーは養成できるが、受け皿がなく若者を殺してしまうことになるのではないか?
p.200
悪しき平等主義を捨て、志あふれる競争をしよう「応用分野の研究者が、企業や財団というマーケットから資金を獲得しようと競争するのはわかる。だが、基礎分野の研究者は、市場とは関係のない公的資金のもとで長期スパンの研究をしているから、競争をしなくていい」というのは明らかな間違いです。
公的資金とは、天から降ってくるものではなく税金です。それならば研究者は納税者に対して「自分がこういう研究を実行する」ときちんと説明し、それにふさわしい能力があるか、納税者の評価を受けなければなりません。適任者が自分なのか別の研究者なのかを納税者に問うとき、競争が生まれます。
もっともらしいけど、専門外のことを正確に納税者が判断できるとは思えない。
p.237
若く優秀なリーダーを育てる国づくりとは能力と覚悟がある若者は、思い切り競争して、世界に通用する人材になってもらう。
安定を求める若者は、自分の役割を自分のペースで果たす人材になってもらう。この二択は、「差別」ではなく「区別」です。この二択は、「選別」ではなく「選択」です。ここから生まれるのは「格差社会」ではなく「多様社会」です。こうしたシステムの整備が、日本という国を、優秀な若い層にとって魅力的な国にするための最善の方法だと私は思います。
内容
この国には、強いリーダーを生む「システム」が必要だ!ハーバード、東大ともに10年以上。世界のトップスクールで教えた経験から明かす、日本人の才能を最大限に生かすための提言。
著者について柳沢幸雄(やなぎさわ・ゆきお)1947年生まれ。
東京大学名誉教授、現・開成中学校・高等学校校長。
1967年 開成高等学校卒業。
1971年 東京大学工学部化学工学科卒業。
1986年 ハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科 助教授
この間、ハーバード大学でベストティーチャーに数回選ばれる。
1999年 東京大学大学院工学部化学システム工学科 教授
2011年 開成中学校・高等学校校長
シックハウス症候群、化学物質過敏症研究の世界的第一人者である。
主な著書に『CO2ダブル 地球温暖化の恐怖』(三五館 1997年)