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パニック障害と過呼吸

パニック障害と過呼吸 (幻冬舎新書) ★★★★☆

2012年出版
 待ちに待った7月28日発売の本が、8月29日に図書館に入荷し、今日借りて一気に読んだ。
目を引いたのは「過呼吸の時深呼吸するのは逆効果」という文句。

 それについて自分で考察したのがこれ→パニック発作時の対応として腹式呼吸は本当にいいのか? - How Many Books Do You Have?。結果として合っていた。腹式呼吸でさらに酸素を取り入れることは悪循環になる。

 著者の治療主義は薬物処方ではなく認知行動療法
認知行動療法と認知再構築は前回読んだパニック障害は治る―認知行動療法から食事法、薬の上手な飲み方まで - How Many Books Do You Have?と同じ内容。

 知らなかったメカニズムが詳しく書かれていたこと、過呼吸には腹式呼吸が逆効果であることを知れたことはとても有益であった。
食事療法、生活習慣、セロトニン、脳内伝達物質に関して触れられていなかったので★4つ

p.26 過呼吸のとき深呼吸するのは逆効果
過呼吸とは過剰に呼吸をしてしまうことですが、なぜ呼吸によって沢山の酸素を体内に取り入れるのに、苦しくなるのでしょうか。
 これは以下のような理由によります。
血液中の酸素は、赤血球の成分であるヘモグロビンとくっついて、体の各部分まで運ばれます。各部の細胞では酸素を消費して二酸化炭素を排出しているので、二酸化炭素の濃度が高くなっています。そのような場所に行くと、ヘモグロビンは酸素を切り離して細胞に酸素を提供します。
 しかし、呼吸しすぎると、二酸化炭素が過剰に体外に排出されてしまい、血液中の二酸化炭素の濃度が下がります。そうすると、酸素とヘモグロビンの粘着度が上昇して、ヘモグロビンは酸素を切り離さなくなる、すなわち、細胞に酸素が提供されなくなってしまうのです。
 細胞に酸素が足りなくなると、体は呼吸を更に増やして、大量の酸素を取り込もうとします。しかしその結果、血液中の二酸化炭素の濃度がさらに下がって、ますます酸素が細胞に行かなくなるという、悪循環に陥ってしまうのです。
 さらに悪いことには、二酸化炭素が少なくなると、体内がアルカリ性に傾きます。そうすると末梢にカルシウムが放出され、手足にしびれが来ます。これが過呼吸のメカニズムです。

過呼吸のメカニズムをこんなに詳しく書いた本を読んだのは初めてだ。
参考になった。

p.27 過呼吸のとき深呼吸するのは逆効果
 つまり過呼吸の時には、酸素をこれ以上、体内に取り入れず、二酸化炭素を体外に出さなければよい、ということになります。過呼吸の応急処置として、ペーパーバック法が行われるのはそのためです。

ペーパーバック法の危険性については過呼吸への対処法の間違い - How Many Books Do You Have?に書いた。その理由の1つとして

過換気症候群の治療としては効果が薄い

とあるが…。有効性、危険性を認識していないようだ。

p.27 過呼吸のとき深呼吸するのは逆効果
 またもっと確実な呼吸法もあります。   

  1. なにかをしているときなら、とりあえず安静な姿勢を取る
  2. 息を止めて、10数える。そのときに息を深く吸わないように気をつける
  3. 10まで数えたら、息を吐き、静かな落ち着いた調子で自らに「リラックス」と声かけをする。そのとき必ず鼻で息を吸うこと。
  4. 3秒間、息を吐いて、3秒間息を吸うことを10回、1分間繰り返す。息を吐く度に「リラックス」と自らに声をかける。
  5. 1分間の呼吸をした後、再び10秒息を止める。
  6. そして再び3秒息を吐いて、3秒鼻で息を吸う6秒サイクルの呼吸を1分間続ける。発作が消失するまで呼吸法を続ける。

「息が吸えない」と狼狽している人に10数えるまで息を止めさせることが出来るのだろうか。
しかしこの呼吸法が出来れば、酸素が十分なのに酸素を欲しがる悪循環を断ち切る(過呼吸を鎮める)ことが確かに出来るだろう。
過呼吸に対する1つの対処法だと思われる。

p.28 過呼吸のとき深呼吸するのは逆効果
深呼吸は、こと過呼吸パニック発作には逆効果です。深呼吸をすると、酸素を沢山吸って、余計に苦しくなってしまうからです。

過呼吸のメカニズムを知ったので納得できる。

p.31 薬より認知行動療法が望ましい
私は、パニック障害はできれば薬無し、認知行動療法のみで治療するのがもっとも望ましく、それが無理ならば抗不安薬の使用を考慮、そして、抗不安薬の量が次第に増えていくようだったらSSRIを用いるのがよいと考えています。

著者の治療主義

p.78 気持ちにゆとりが生まれ恋人が出来る
「治そう」と「自分で」努力する人は、かかる時間に長短はありますが、必ず状況が改善します。これは、私が日々の診療を通して何時も感じることです。

自分も真実だと思う。

p.87 過呼吸が苦しいのは二酸化炭素が足りなくなるから
私たちは過呼吸でくるしくなると酸素が足りないと感じますが、じつはこれは、二酸化炭素が足りないことに他なりません。
 さらに過呼吸になると、体の血管の一部が収縮します。
これにより、細胞に送られる血液の量自体が減り、ますます細胞に酸素が渡りにくくなってしまうのです。過呼吸による収縮が特に大きいのは、脳の血管だと言われています。

大体の本に書いてある。

p.89 どんなに苦しくて決しても死ぬことはない
過呼吸による、細胞に運ばれる酸素の減少は、とても軽度なものだということです。人体にほとんど無害と言っていいぐらい、生命には全く別状ありません。

「死ぬことはない」と書いてある本はあっても、「ほとんど無害」と書いてある本には初めて出会った。
なんて安心できる言葉だろう。

p.91 発作のコントロールとは呼吸のコントロール
自分の意志とは関係なく過呼吸になったとしても、意識的に呼吸をコントロールして過呼吸を防ぐことは、現実に可能なのです。実際、極端な例ではありますが、私たちは水中で息を止めることが出来ます。

確かに。自律神経が専制的に司っていると思っている呼吸を、自分の意志でコントロール出来ることは間違いない。

p.95 不安や恐怖心は本来、有益・不可欠なもの
以下に交感神経の働きが活発になることで体に起こる変化を挙げてみます。
血液は筋肉、とくに足にある大きな筋肉に振り分けられます。すぐに栄養を必要としない部分へは、あまり血液が生きません。したがって顔に振り分けられる血液は少なくなり、「顔面蒼白」になります。
食べ物の消化は二の次になります。胃は食物を消化するのを中止します。唾液の分泌が少なくなるので口が渇きます。

この生体メカニズムも興味深い。本当に面白い。

p.106 ふだんから練習しておくことが大事
過呼吸の最初の兆候が現れたとき、すぐにこの呼吸コントロールをはじめれば、症状は1から2分の間に鎮まり、「パニック発作」にまで至ることはありません。

p.27に書いてある呼吸コントロール。

p.173 抗不安薬は必要なときだけ頓服として
毎日定期的に服用するのがよいと話す医師と、私のように必要なときにだけ頓服として服用するよう指示する医師がいます。「パニック障害」では1週間で薬物への依存が完成すると言われ、薬を飲まずにいられなくなることが多いので、私は後者を薦めています。

メイラックス1日2錠を3ヶ月弱続けている。こればかりはどういう治療主義の担当医に当たるかどうかにかかっている。
そういう治療主義の医者もいることも認めているところは素晴らしい。
前の本にあったベンゾジアゼピン系薬物を処方する医者を嘆く排他的、グローバル・スタンダード”を盲信する医者もいるというのに。

p.175 依存性は低いが副作用・離脱症状があるSSRI
抗不安薬の服薬回数がしだいに増大していくケースにSSRIが有効な事も多く、選択肢の1つではあるのですが、やはり認知行動療法のみで治療を行うのが望ましいのは言うまでもありません。

内容紹介
症状と不安のコントロール法を、専門医が親身にアドバイス

突然息が苦しくなる「過呼吸」は、「パニック発作」と呼ばれる症状の1つ。一度や二度なら心配ないが、発作が続く、発作が不安で電車に乗れないなど、日常生活に支障が生じたら、それは「パニック障害」かもしれない。50人に1人の割合で誰でもかかる可能性がある「パニック障害」。発作や、発作への恐怖感のあまり、つい薬に頼る人が多いが、実はパニック障害は、薬なしのほうが早く確実に治る。発作への対処法、不安のコントロール法を専門医がアドバイス。
過呼吸で死ぬことは絶対にない
過呼吸のときに深呼吸するのは逆効果
■自分の1分間の呼吸数を数えてみる
抗不安薬は1週間飲んだだけで依存症状ができあがる