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とんび

とんび ★★★★☆


ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していくの中でホリエモンが獄中で読んで泣いたというので、興味を持った。
”親と子”、”生と死”、”嘘と真実”、”都会と田舎”、”好景気と不景気”、”ローテクからコンピューター化”、”古い考えと新しい考え”。
対比がハッキリとしていてとても読みやすい。

主人公のヤスは粗暴な父。
だけど、自分のことを「とんび」と言われようと、息子が「たか」と例えられれば怒らず内心嬉ぶ。
昔の男親らしく不器用だ。
不器用だけれども、照れ隠しの裏にまっすぐな家族への愛がある。

アキラが連れてきたバツイチで子持ちの彼女を、「アキラの嫁は、自分の娘だ」と言ったこと。
そして野球部での事件で最後はアキラの肩を持つところは、父親の子への大きな愛情が垣間見られた。


以前見た三國連太郎主演の息子に似ている。こちらも名作。


p.245 カウントダウン

わからない。わからないのだ、ヤスさんにも。
「謝らんのじゃったら……ほんま、謝らんつもりじゃったら……東京にはいかせんけえの!」
そんなことを言うつもりではなかったのだ、ほんとうに。

理路整然、清廉潔白な聖人ではなく、いかにも人間らしい。
自分にも同じ経験がある。
なんか言ってしまい、引っ込みがつかなくなってしまうんだ。


p.363 ふるさと
アキラは備後を「向こう」と呼び、東京を「こっち」と呼ぶ。

内容紹介
昭和37年、28歳のヤスさんに長男アキラ誕生。この日から、「とんび」と「鷹」の長い旅路がはじまった――。著者自らが歩んできた時代へのオマージュを込め、魂で描ききった、愛すべき父親の物語。
内容(「BOOK」データベースより)
つらいときは、ここに帰ってくればいい。昭和37年、ヤスさん28歳の秋、長男アキラが生まれた。愛妻・美佐子さんと、我が子の成長を見守る日々は、幼い頃に親と離別したヤスさんにとって、ようやく手に入れた「家族」のぬくもりだった。しかし、その幸福は、突然の悲劇によって打ち砕かれてしまう―。我が子の幸せだけを願いながら悪戦苦闘する父親の、喜びと哀しみを丹念に描き上げた、重松清渾身の長編小説。