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GIGAZINE 未来への暴言

GIGAZINE 未来への暴言 ★★★★★



表紙はgigazineのウェブページの一記事。
一番下に本書を読むリンクがありマウスがのっているというアイデアが素晴らしい。

タイトルでは暴言といっているが、とても熱い情熱を伴った言葉だった。
貧困に手をさしのべ、国家を真剣に憂いているのが伝わってくる。
ささいな事柄で構成されていると勝手に思っていたので、このマクロな視点はとても意外。
提言されている未来が確かに来るのかもと思う一方、肝心のパトロンモデルは十分な説得材料はなく納得は出来なかった。

余談だが、不思議なことに第一線の人はマクロな視点を持つべくして持つのか、本書の「教育を良くするには教師を教育しなければいけない」という提言をマイクロソフトビルゲイツも言っている。


p.32
googleは「形式知」しか検索できないからです。「暗黙知」、いわゆる経験によって昇華された知識については決定的に不足しています。

例えば口コミであるとか、ノウハウであるとか、そういういまだ形式知化されていない暗黙知が山のようにあります。mixi・モバゲー・Greefacebookに代表されるよーシャルネットワーク、価格.com食べログ・@cosmeなどのクチコミの集積対体、今誰が何をしているのかを可視化したTwitterのようなライフログ、そういったものの出現はこの「暗黙知」を引きずり出して形式知化し、検索可能にするための第一歩にすぎません。

次は何が形式知化されるんだろう。
 

p.126
少なくとも飛ばしてはいけないのは現代史よりも尚その先にある今この時代、すなわち「現代」です。
この文明社会の中で自己の生存のために必要なものを最優先で教えるべきだとすれば、今の状況を教えずして何を教えるべきのでしょうか?

p.155
インターネットの情報の多用さはややもすると、自分のエゴのみで構成された居心地のいい空間を作ることだけに邁進させてしまいます。

無限の空間というのは不安で恐ろしいもの。


p.158
可視化される、記録されるというインターネットの特性は「見ていなければ何をしてもいい」というクローズドな現実とは真逆の世界です。

あれ、本当だ。
ネットというと匿名というイメージがあるけど、実際は逆だ。


p.172
今までの経済モデルは「価値のあるものには相応の対価を払おう」というものでした。無料戦略は「ここまでは無料でどうぞ、ここから先は有料でどうぞ」というものです。パトロンモデルはさらにその先、「無料のものに対価を払おう」という考え方です。

極論すれば「ゼロ円のものに金を払え」ということなので、普通の経済感覚からは理解できないはずです。

このパトロンモデルが「欲しいが対価を払えない」ことの解決法というのはやっぱり理解できない。
書かれているように、払えないのならあきらめるか消費者金融に駆け込むのが資本主義。
それとも書かれていないが、「欲しいが対価を払えない」人を巻き込まないと商売が成り立たないということなんだろうか。
しかし、その犠牲として今まで対価を払っていた人から不安定な寄付を得ることになってしまう。
著者の提示する今後の経済状況を考えると、この寄付システムもかわらず先行きが暗いと思うのだが。




内容紹介
日本でもっとも読まれているモンスター・ニュースサイト、GIGAZINEによる初の書籍。編集長の山崎恵人が来るべきネット社会の未来を語り尽くす!
暴言の詳細は以下から。

◆layer01:「Knowledge Is Our Power」知識は我らの力なり
  ◆layer02:専門バカvsオタクの構図「専門バカになるな、オタクになれ」
  ◆layer03:「理性・知性・感性」のバランス
  ◆layer04:インターネットは「悪魔の道具」か「天使の羽根」か
  ◆layer05:YouTubeのみが真の「破壊的ビジネスモデル」
  ◆layer06:「個人の力の最大化」=「インターネット」
  ◆layer07:「フリー」のその先、無料戦略の次
  ◆layer08:ファンがパトロンになる「パトロンモデル」成立への道
  ◆layer09:しかるべき場所にしかるべき人を、職業選択の最適化
  ◆layer10:入試の時にパソコン持ち込み可・インターネット可であれば大学の教授はどういう問題を作るのか?
  ◆layer11:「文明社会でのサバイバル」を教えるのが学校
  ◆layer12:好きなことをしてメシを食う時代の到来
  ◆layer13:10人中9人に嫌われてもいいから残りの1人に興味を持ってもらう
  ◆layer14:著作権という概念の崩壊、ファイル共有ソフトは最終局面に
  ◆layer15:量から質が生まれる、大量にならなければ高品質にはならない
  ◆layer16:超少額決済システムを握ったところが最終的な勝利者に
  ◆layer17:インターネットの規則を考えるというのは世界の規則、世界のルールを考えるのと同じ
  ◆layer18:みんなのルールを決めるのは「政治家」ではなく「サイレントガーディアン」に
  ◆layer19:旧世代と新世代のかつて無いレベルの「激突」
  ◆layer20:インターネット上に出現する国家のカタチ、領域・人民・権力
  ◆layer21:結論:「無料であるものに対価を払う」という時代
 
<著者プロフィール>
山崎恵人(やまざき けいと)
関西学院大学経済学部卒業。株式会社OSA代表取締役。
2000年から個人でニュースサイト「GIGAZINE」を運営し、2006年にGIGAZINE編集部を法人運営化。GIGAZINE運営開始10周年記念という節目に当たって講演などを行い、この書籍もその一環として執筆。

ニュースサイト「GIGAZINE」(ギガジン)
http://gigazine.net/
内容(「BOOK」データベースより)
ネットをただの情報の竜巻として見るか、それとも現実の延長線上にある異なる「世界」と見るか、それによって未来は全然違う。ネット世界の驚愕の未来予想図。日本で最も読まれているモンスター・ニュース・サイトが視たインターネットの大激変