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君たちはどう生きるか

君たちはどう生きるか ★★★☆☆

3人の仲間との約束を破った自責の念!
ああいうのは人生で何度か経験した。当時の自分を思い出した。
これを経験してこなかった学生はいないのではないだろうか。
もうどうしようもなく、時間だけが過ぎていく。
どうしたらいいだろう?関係を回復したい、誤解を解きたい、……いや、このままうやむやに。
1番の解決方法は直ぐに行動を起こすことだと思う。
時間がかかれば、気まずくなり、その悶々とした気持ちを抱いたまま日々を過ごさなくてはならないからだ。

コペル君の話を聞いたおじさんが、ノートを通して教え、気づかせ、導いている。
つまり、おじさんのノート、「ものの見方について」、「真実の経験について」、「人間の結びつきについて」、「偉大な人間とはどんな人か」、「人間の悩みと、過ちと、偉大さとについて」がどう生きるかに対する道しるべになっている。

内容は、小学生には難しく、高校生には簡単だろうから、中学生に丁度良い本だと思う。
少年少女用の本として読みやすく、啓蒙書として良いと思う。
★3つ

p.26 一 へんな経験
じぶんたちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりついていた間、人類には宇宙の本当のことが分からなかったと同様に、自分ばかりを中心にして、物事を判断してゆくと、世の中の本当のことも、ついに知ることが出来ないでしまう。大きな真理は、そういう人の眼には、決して映らないのだ。

自分を中心とした考え方をやめようという教え。

p.56 勇ましき友
肝心なことは、世間の目よりも何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当に君の魂で知ることだ。そうして、心底から、立派な人間になりたいという気持ちを起こすことだ。いいことをいいことだとし、悪いことを悪いことだとし、一つ一つ判断してゆくときにも、また、君が良いと判断したことやってゆくときにも、いつでも、君の胸からわき出てくるいきいきとした感情に貫かれていなくてはいけない。

立派な人間とは何かという教え。

p.94 ニュートンの林檎と粉ミルク
いろいろな学問は、人の今までの経験をひとまとめにしたものといっていい。そして、そういう経験を前の時代からうけついで、その上で、また新しい経験を積んできたから、人類は、野獣同様の状態から今日の状態まで、進歩してくることが出来たのだ。一人一人の人間が、みんな一々、猿同然の所から出直したんでは、人類はいつまで経っても猿同然で、決して今日の文明には達しなかったろう。
だから僕たちは、出来るだけ学問を修めて、今までの人類の経験から教わらなければならないんだ。

勉強の重要性

p.97 ニュートンの林檎と粉ミルク
人間が人間同士、お互いに、好意を尽くし、それを喜びとしているほど美しいことは、ほかにはありはしない。そして、それが本当に人間らしい人間関係だと、―――コペル君、君はそう思わないかしら。

人間関係とは

p.130 四 貧しき友
人間の本当の値打ちは、いうまでもなく、その人の着物や住居や食物にあるわけじゃあない。どんなに立派な着物を着、豪勢な屋敷に住んでみたところで、馬鹿な奴は馬鹿な奴、下等な人間は下等な人間で、人間としての値打ちがそのためにあがりはしないし、高潔なこころを持ち、立派な見識を持っている人なら、例え貧乏していたってやっぱり尊敬すべき偉い人だ。だから、自分の人間としての値打ちに本当の自信を持っている人だったら、境遇がちっとやそっとどうなっても、ちゃんと落ち着いて生きていられるはずなんだ。僕たちも、人間であるからには、例え貧しくともそのために自分をつまらない人間と考えたりしないように、、―――また、たとえ豊かな暮らしをしたからといって、それで自分を何か偉いもののように考えたりしないように、いつでも、自分の人間としての値打ちにしっかりと目を付けて生きてゆかなければ行けない。

人間の値打ちについて

p.136 四 貧しきとも
「ありがたい」という言葉に良く気をつけてみたまえ。この言葉は、「感謝すべき事だ」とか、「お礼を言うだけの値打ちがある」とかという意味で使われているね。しかし、この言葉の元の意味は、「そうあることがむずかしい」という意味だ。「めったにあることじゃあない」という意味だ。自分の受けている幸せが、めったにあることじゃあないと思えばこそ、我々は感謝する気持ちになる。それで、「ありがたい」がという言葉が、「感謝すべき事だ」という意味になり、「ありがとう」といえば、御礼の心持をあらわすことになったんだ。

p.192 五 ナポレオンと四人の少年
英雄とか偉人とか言われている人々の中で、本当に尊敬が出来るのは、人類の進歩に役立った人だけだ。そして、彼らの非凡な事業の内、真に値打ちのあるものは、ただこの流れに沿って行われた事業だけだ。

偉人と英雄とは

p.256 七 石段の思い出
「誤りは真理に対して、ちょうど睡眠が目覚めに対すると、同じ関係にある。人が誤りから覚めて、よみがえったように再び真理に向かうのを、私は見たことがある。」
これはゲーテの言葉だ。
僕たちは、自分で自分を決定する力を持っている。
だから誤りを犯すこともある。
しかし―――
僕たちは、自分で自分を決定する力を持っている。
だから、誤りから立ち直ることも出来るのだ。

誤りからの立ち直りについて

p.246 七 石段の思い出
人間の一生の内に出会う一つ一つの出来事が、みんな1回限りのもので、二度と繰り返すことはないのだということも、―――だから、その時、その時に、自分の中のきれいな心をしっかりと生かしてゆかなければいけないのだということも、あの思い出がなかったら、ずっとあとまで、気がつかないでしまったかも知れないんです。

でも、潤一さん、そんな事があっても、それは決して損にはならないのよ。そのことだけを考えれば、そりゃあ取り返しがつかないけれど、その後悔のおかげで、人間として肝心なことを、心にしみとおるようにして知れば、その経験は無駄じゃあないんです。それから後の生活が、そのおかげで、前よりもずっとしっかりした、深みのあるものになるんです。 

ありきたりだけど、少年少女にむけて大変分かりやすい母親の吐露だと思う。
中村天風の一生は一生であり二生はないと同じだ。

内容紹介
だれもかれもが力いっぱいにのびのびと生きてゆける世の中
だれもかれも「生まれて来てよかった」と思えるような世の中
じぶんを大切にすることが同時にひとを大切にすることになる世の中 
そういう世の中を来させる仕事がきみたちの行くてにまっている
大きな大きな仕事 
生きがいのある仕事 

吉野源三郎
(本文とびらより)

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