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舟を編む 2014年17冊目

舟を編む ★★★☆☆


荒木、西岡、馬締、岸辺各人の目を通しての辞書編纂。
言葉を言葉で説明する難しさだけではなく、楽しさ、重要さを感じさせる内容だった。

主人公の馬締は辞書編纂するために生まれてきたかのような男。
先輩の西岡はその真逆。典型的な漫画のようなわかりやすさで、辞書編纂に堅い印象を持っていた自分には意外で軽い印象を受けた。おかげで辞書編纂という興味の出ないジャンルを最後まで飽きることなく読むことができた。

物語はなんの悪意も登場せずほのぼのとしていて山場のようなものがない。
唯一の修羅場が第四校で見つかった単語の抜けだが、それすら読んでいて三月の出版には間に合うだろうと思っていた。
読者の想像を裏切らない予定調和がちょっと残念だ。


ところで、必要とは思えない料理の描写がちょっとくどくない?




情熱をかけて何かをなすというなら、暦を作る「天地明察」の方が山場があり面白かった。
あっちは国を代表して暦を作る。失敗したら切腹という状況。
こちらは失敗したらせいぜい会社をクビになるくらいだろう。
切迫感が違う。



p.145

有限の時間しか持たない人間が、広く深い言葉の海に力を合わせて漕ぎだしていく。こわいけれど、楽しい。やめたくないと思う。真理に迫るために、いつまでだってこの船に乗りつづけていたい。

受賞歴
2012年本屋大賞 大賞受賞
内容紹介
玄武書房に勤める馬締光也は営業部では変人として持て余されていたが、新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられる。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか──。言葉への敬意、不完全な人間たちへの愛おしさを謳いあげる三浦しをんの最新長編小説。