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三流

三流 ★★★★★


同じパニック障害になった長嶋一茂に興味が湧き読んだ「乗るのが怖い―私のパニック障害克服法 - How Many Books Do You Have?」がとても素晴らしかった。
そこで本書も手に取った。

非常に文章が上手い。
父親がスーパースターという希有な環境で生きていく当時の心情を客観的に表現できていて、葛藤が良く描かれている。
間違いなく七光り、ボンボン、野球を引退した後でも野球にしがみついているというイメージは払拭される。
長嶋一茂が金持ちの子といえども、同じ境遇に生まれたかったとは決して思わないだろう。
自律神経失調症になっても無理はないなと思わされる内容だ。
自分ならとても背負いきれない。

いいじゃない野球にしがみついても。何も知らない人から七光りと言われようと。
プライドを捨ててまで自分から売り込みK-1リポーターを獲得しようと。
生きるのに一生懸命なんだ。

この本を読んで、より長嶋一茂が好きになった。

p.210 18 「長嶋茂雄」という父親
俺と親父はみんなの目の前で、他の誰にも見えないキャッチボールをしていたのだ。

ここちょっと嘘っぽい感じがする。
ライターが色付けたんじゃないかと勘ぐってしまう。

p.222 20 その夜、目の前が突然揺れ始めた
建物が突然ぐらぐら揺れだしたのだ。

少なく見積もっても震度4か5は間違いない。

すごいめまいだ。

p.223 20 その夜、目の前が突然揺れ始めた
いくら息を大きく吸っても、呼吸が楽にならない。自分の周りの空気が、突然薄くなってしまったような感じだ。
水のなでもないのに、このままでは溺れてしまうんじゃないかと想像した途端に、強烈なパニックにおそわれた。
溺れまいとして、必死で息を吸う。吸えば吸うほど苦しくなる。ますますパニックはひどくなる。心臓が爆発しそうなくらい鼓動が激しくなり、俺はもうこのまま死んでしまうんだと覚悟したくらいだ。

過呼吸がありありと書かれている。

p.224 20 その夜、目の前が突然揺れ始めた
鼻と口に紙袋を当て、しばらく呼吸をすればいいのだ。

ペーパーバック法をしているのか。
ちゃんと酸素を摂取していないと危ない。

p.224 20 その夜、目の前が突然揺れ始めた
しかし、医師の説明を受け、危険な疾患ではないことを理解しても、それで楽になれたわけではない
いくら死ぬことはないとはいえ、息を吸えば吸うほど息苦しさが増大するという苦しみとパニックは、筆舌に尽くし難い。
あの恐怖感は、経験した人間にしかきっとわからないだろう。
しかも、過呼吸は癖になる。

脳が覚えてしまうんだろうな。

p.230 20 その夜、目の前が突然揺れ始めた
この頃になると、ヤクルト時代から見るようになった、空から落ちる夢を毎晩のように見ていたという。
一茂の無意識が、父親のような野球選手になるという夢がもはや現実不可能な幻であることを、一茂本人に訴えようとしていたのだ。

後ろはいかにも後付っぽくて嫌だ。

p.248 22 敗者だからこそ、見えるものとは
つまり、俺は負け犬なのだ。
生まれてからずっと負けっ放し、そして今も負けている。
俺は敗者なのだ。

敗者だからこそ見えることがある。

そして敗者であることを自覚して、ようやくかすかだが、少しは人生の真理のようなものがみえてきたというわけなのだ。

良かった、前向きで。

p.251 22 敗者だからこそ、見えるものとは
自律神経失調症は治っていないのだ。
けれど治すつもりもないと彼は言う。
彼は今、この症状と折り合って生きていこうと考えている。

薬を飲みつつ仕事をこなしている。
寛解という状態だろう。


最後にタイトルについて。
タイトルに「三流」がつけられた理由は
博士も知らない 見城 徹(3/6) - YouTubeの6分20秒から語られている。

まずタイトルありきだった。
「二流」でも良い感じがするけど「三流」というインパクトは確かにある。

内容(「BOOK」データベースより)
偉大すぎる父親。厳しいプロの壁。野村監督との確執。突然、襲ってきた過呼吸症候群。知られざる夢は夢のままに終わり、自分が敗者である事実と向き合って生きることを決意する。しかし、絶望を突き抜けなければ、決して見えないものもあった―。スーパースターを父にもった男が、初めて明かした揺れる魂の軌跡と、長嶋家の真実。